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震災後、原ノ町駅構内に取り残されいた特急「スーパーひたち」が撤去された。
彼は、3時9分に原ノ町駅を出発し、上野駅へ向かう予定だった。出発前に震災が発生し、発車を取りやめた。常磐線は、津波により仙台方面が、原発事故により東京方面が遮断された。彼は、陸の孤島となった南相馬市で、私たちと共に5年を過ごした。
19日朝、最後の撤去作業を見守った。通りかかた作業員に、声を掛けさせてもらった。
「(彼は)解体されるんですよね」
「ああ(そうだよ)」
私の様子に気使い、ゆっくりと低い声が返る。ヘルメット姿の作業員は、少し間を置き、話を続けた。
「(車体は)使い続けていないと、ダメになるからね」
「家と同じだよ」
「車内は、あの日のままだったよ」
「テーブルの上には、ジュースが置かれたまま」
「車内中、カビだらけさ」
震災から4週間後、新学期を迎え、娘の勉強道具を取りに、避難先から一時帰宅した。冷蔵庫を開けたときの、カビの臭いを思い出す。震災の体験は、臭覚がしかっりと記憶している。
人々の集いも同じだ。やり続けていないと、ダメになる。朝市でいただいた、炊き立てのおにぎりを思い出す。震災前の体験は、味覚がしっかりと記憶している。
突然、彼が話し掛けてきた。
「自分の手を見ろ!」
「カビなど生えていないよね」
「(オレと違い)お前は、[生きもの]だからね」
「[生きもの]は、時間の流れの中で活きている」
「(自覚がなくても)お前は、時間と共に変化し続けている」
「(オレと違い)お前は、[すごい力]を持っている」
ふと我に返る。彼の最後の見送りをせずに、[いまの生活]に戻ることにした。彼に一礼をし、車に乗り込んだ。
「ありがとうございました」
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